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> オーガニックコーヒーの危機 ・・
出始めの頃は、化学肥料や農薬が買えない貧困農家が作っているのが有機栽培さと皮肉られていたオーガニックコーヒーも、今やプレミアム付きのスペシャルティーコーヒーとして、押しも押されもしない付加価値商品の座を確保していますが、猫も杓子も有機栽培に変えて、製品が希少価値を喪失したらどうなるのか。持続可能な農法であるためには、有機栽培が望ましいには違いないとしても、従来型の栽培から有機農法に転換するためのコストを考えると、果たして農家にとって割が合うのかという問題に、リヒト社報告が真っ向から挑戦しています。

オーガニックコーヒーが消費者に高値で売れた初期の理由は、有害物質とは無縁だという健康志向だったように思うのですが、対立意見として、トマトやレタスのようにナマで食べるわけじゃなし、焙煎した上に熱湯で抽出したコーヒーに、残留農薬の心配などする必要はないとの考え方も強かったのではないでしょうか。それが10年ほど前から、主な理由が環境問題に変わってきたようで、農園に投入する化学物質が、土壌を汚染するだけでなく、下流一帯の水資源に依存している住民の健康にも被害を及ぼすことが懸念されることから、有機栽培の価値が見直されたと申せます。

問題は大手ロースターまでが一斉に有機栽培製品市場に参入した場合でも、付加価値商品としてのプレミアムが確保出来るのかという経済性にあり、リヒト社は農家に対して熟慮を求めています。通常品質のコーヒーに対する需要は減退気味なのに、世銀の「コーヒー市場の新しいパラダイム」と題する最近の調査などでは、最高品質の製品が大きく伸びており、新市場ではソリュブルコーヒーに転換する動きも見られ、コーヒー市場のピンとキリとの二極化傾向が一層顕著になっている。ピンの方での近年の成功話としては、最近益々多く語られるようになったスペシャルティー市場とか差別化商品とかの成長が挙げられ、それらは通常商品より上位に特徴付けられるものとして区別されている。

このような最近のコーヒー市場で、環境にやさしい様々な方法というような、いわゆる持続可能な栽培方法による製品への需要は、最もダイナミックな要素の一つで、中でもオーガニックコーヒーが最強の推進役になっているが、それは北米市場での伸びが著しいからだ。例えば米国有機取引協会の最新調査によれば、最近5年間のアメリカ国内でのオーガニックコーヒー消費は、年率約12%で上昇しているとのことだが、民間の業界筋では、伸びがもっと大きいと見ている。

西欧でも恐らく過去5年間の伸びは平均10%程度あったと思われるが、一部の業界調査では、依然として自由取引のコーヒーの方がうまくやっていると見ている。欧州でも伸びている商品の大部分はオーガニックコーヒーで、環境にやさしいコーヒーとだぶっている。米国では恐らくフェアトレードコーヒーの90%は有機栽培だろうが、欧州での比率はもっと低く、世界平均は50%程度と思われる。

業界のベテランで、世銀の最新報告書の共同執筆者だったダニエレ・ジョヴァニッチ氏によれば、主要な輸入国市場でのオーガニックコーヒーの消費合計は、毎年少なくとも10%伸びており、全体のコーヒー消費増加率の10倍のスピードだという。彼は今後も伸び続けるだろうというが、成否の鍵は、オーガニックがコーヒー市場の主流として成功するかどうかだと云っている。

世銀報告共同執筆者のブライアン・ルーウィンとペイノス・ヴァランジスによると、オーガニックに証明が発行され始めてから20年になるが、需要が伸びたのは最近10年間程度のことだという。主要な輸入国のスーパーマーケットでは、今や少なくとも有機コーヒーを1種類は置いており、一箇所での買物が益々一般化している現在、どの商品にとっても売場に置いておくことは、重要なことと云える。オーガニックコーヒーは既にニッチマーケットから主流商品の仲間入りをしている。一部の業界では、1990年代の初期に有機製品に興味を示し始めたスーパーマーケットで、それほど何年も前でない時代には特殊な食料店でしか売られていなかった品物が、売上のおよそ半分を占めるようになっていると推測している。

その上、一部の小規模で特殊なロースターだけが製造していたオーガニックコーヒーが、大企業の関心を呼ぶようになり、その中にはノイマンやクラフト食品やネスレも含まれているという。更には雨後の筍のように増えている小さなコーヒーバーでも売られるようになっている。信頼出来る上質のコーヒーとの評価を得ているスターバックスなどが一例だが、独自のオーガニックブレンドを売っており、この種の製品への関心を高めるのに大いに役立っている。しかし今のところオーガニックコーヒーは、その市場規模が未だごく僅かで、世界消費全体の1%以下だと思われ、持続可能なコーヒーといっても、精々3%程度だろうと見られている。といってもオーガニックコーヒーの正確な市場規模を掴むのは至難の業で、それぞれの市場によっても、数字はかなりばらついている。例えばICOでは、輸出国からオーガニックコーヒーの輸出率報告がないため、実際にはもっと多いとしながらも、2002/03年度のオーガニック輸出世界合計は、291,000袋以下だとしている。同報告によれば、主要輸出先である米国向けが62,681袋、次いでドイツ向けが22,313袋、オランダ向けが12,891袋となっている。

尤もITCがコーヒーガイドの中で推定している成熟輸入市場での同年度のオーガニックコーヒーの世界消費量は、70万袋としている。又2001/02年度の世界生産を80万袋と見ているが、アナリストの一部には、急成長ぶりから見て、既に100万袋に達していると考えている人たちもいる。

一方オーガニックコーヒー供給国としては、ラテンアメリカ諸国の生産量が断然多く、1960年代に初めて公式にオーガニックコーヒー生産国となったメキシコが、首位を走っており、業界筋によれば、年間生産量が30万袋に達しているという。この数字はICOへの報告より多いが、その理由として考えられるのは、日陰栽培のような環境にやさしいコーヒーとかフェアトレードのコーヒーも、勘定しているのではなかろうか。

中南米の他のアザーマイルド生産国も、オーガニックコーヒーの大型供給国だが、ブラジルも近年この市場に参入しており、大部分はミナスジェライス州産で、一部は国内で消費されるが、年産量は現在5万袋程度と見られている。

パプアニューギニアはアジアで唯一ICOにオーガニックコーヒーの輸出実績を報告している国だが、業界筋によれば、アジアでもっと輸出実績を持っているのはインドネシアと、次いでインドだという。一方アフリカからは、証明付きのオーガニックコーヒー輸出が殆ど報告されていないが、エチオピアだけは報告が出ている。といってもエチオピア産の大部分のコーヒーは、化学肥料や農薬を使わずに栽培されているものと思われるが、有機栽培の証明付きとしてICOに報告される数量は、ごく僅かに過ぎない。ウガンダ、タンザニア、マラウィの各国も又、時折僅かな数量のオーガニックコーヒーを輸出しているが、その他にも象牙海岸、カメルーン、マダガスカル、ガボン各国が、オーガニックの輸出を計画中で、これらの国では証明付きの有機ロブスタの実験農園を造成するために、国際的資金援助を求めている。

これら諸国の計画が成功するかどうかは今後の問題だが、多くの評論家は、オーガニック生産に踏み出す決心をする前に、もう一度よく考えろと云っている。何故なら生産出来たとしても、それがニッチ市場への参入を保証するわけではないからだ。事実受け取れるプレミアムは、近年縮小気味で、オーガニック市場が既に飽和状態に近いことを示している。さして何年も昔の話でなく、一部のオーガニックコーヒーは、通常品の2倍の値段で売れていたが、今では業界筋によれば、精々10%程度のプレミアムしか取れないという。しかし既に確立されている供給者から提供されるスペシャルティー商品或いは希少品には、この2倍から3倍のプレミアムが付与されているという。正直なところ業界としては15%が期待出来るプレミアムの上限だろうと、ITCのガイドブックは述べている。更にITCはプレミアムがこの上限を超えるようならば、品質が絶対的に飛び抜けて良いものでない限り、消費者の興味が急速にしぼむに違いないとも述べている。

屡々政府や国際援助機関から勧められて、余りにも多くの農家が、有機栽培列車に乗り遅れまいと近年殺到したために、ITCデータが示しているように、今や過剰生産状態だが、業界の見方としては、大手ロースターが積極的に有機製品の取扱いに乗り出せば、それがブームの終りになると信じている。その結果確かに有機栽培されたコーヒーでも、オーガニックコーヒーとしてプレミアムを付けて売ることが出来なくなってしまい、単に他の通常品と混ぜて売る外はない。このような事態は、有機栽培コーヒーの需要が拡大を続けていて、過剰生産状態でないとしても、市場に割り込むことが簡単ではないし、生産者は有機栽培への切り替えに慎重であるべきだということを明示している。新参ものにとっては、自分の品物に対してバイヤーの関心を引くことが非常に難しく、ロースターや商人たちは、安定的に欲しい品物を渡してくれてきた信頼出来る供給者を選ぶに違いない。しかも現在焙煎業者が要求するようになった権威のある独立証明機関の発行する有機栽培の証明書は、新参ものの生産者にとっては、簡単に手に入れられるものではない。このことも、生産農家として有機栽培を始める前に十分熟慮しなければならないもう一つの理由だろう。

しかし良い面としては、通常生豆代金の3%以下といわれる有機栽培の証明料金が、最近低下してきたことだ。それは生産国自身の証明機関の権威が確立されてきているためだ。しかしITCによれば、証明料が安いとはいえ、必ずしも広範囲の承認が得られているわけではないという。もっとも証明の費用がいくらであろうと、今日の競争が厳しい市場では、オーガニックの証明だけで売れるわけではなく、何かそれ以外のセールスポイントが要ることは、日本市場での経験で裏付けられている。日本では経済状態が悪いとはいえ、他の市場と比べても、期待されたほどオーガニックの売行きは伸びていない。一つの理由として考えられることは、消費者が何度もプレミアムを払った結果、通常品より明らかに良い商品が買えなかったために、オーガニックコーヒーが評判を落としてしまったためだ。環境にやさしいコーヒーの採用には、全部の専門家が警告しているように、生産者として割に合う方法かどうかの問題がある。オーガニックコーヒーに転換するための初期投資が多く、プレミアムをたくさん取らない限り、とても回収は出来ない。特に証明取得のために、3年間は化学肥料や農薬を使えなくなるが、その間にはオーガニックコーヒーとしてのプレミアムが取れないし、反収は大幅に低下する。

専門家の一致した意見は、有機栽培が小規模農家には割のよい農法だというもので、特にコーヒー以外の換金作物があれば、オーガニックに転換期間中の食い扶持を稼ぎ出して貰えるし、有機製品が出始まれば、付加価値が取れるようになる。一方大規模農園の場合は、有機栽培への転換費用が高いものにつくし、見返りの報酬は転換費用をカバーするには不十分だ。

環境にやさしいというのは流行語になっているものの、オーガニック製品の方が消費者にとっては健康的である上、多くは高品質であり、しかも多少であっても地球を保護することに役立っていると信ずることが出来る。持続可能な生産を推進することは、何年間も各種の会議で世界中が農業の目標として掲げてきたことで、安定的なエコシステム確保に欠かせない動植物の生態系を維持することの重要性に基づいている。

ITC報告が指摘しているように、オーガニックの推進者たちは、化学肥料や農薬を使用する従来型農業は、長期的に土壌を崩壊させ環境を破壊する上、消費者にも生産者にも健康障害のリスクがあるため、持続可能ではないといっている。

時間が経てば、市場の関心が益々高まり、大手ロースターもやがては興味を示すことが間違いないので、オーガニックコーヒーが製品の主流になるだろうが、全部の生産者にとって有機栽培が良いと云えるわけではなく、もしオーガニックに転換する農家が多過ぎれば、これが本当の危険だと多数の専門家が予見しているように、現在の需給不均衡が更に長期化して、生産者の収益力が低下し続けることになってしまう。既にオーガニックのプレミアムが低下しているために、有機に転換するための投資をする魅力が薄れてきている。
by horoniga-com | 2004-07-26 01:25 | マスターのつぶやき

コーヒー屋の反省雑記
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